糸のことでもたくさん話したいことがあります。今回は、綿を例にとって糸になるまでの工程をお伝えしたいと思います。
綿は植物です。ふわふわの綿花を収穫して、まずはそこから糸を取り出していきます。自然のものなので取り出せる糸の長さはまちまちです。そして一般的に長い方が高級とされています。
長くとも10センチ程度ですので、長い短いの差がそれほどないのではないかと思われるかもしれません。短い2,3センチ糸はそれらを引き揃えて撚りをかけていきます。糸に回転をかけて短い糸を繋げていくようなイメージです。短いものを撚っていくとどうしても表面に毛羽がたったようになります。長い糸を撚り合わせていくと、こちらの方が表面が滑らかな仕上がりになります。光沢感が出ます。
高級ブランドでは、シーアイランドコットン(海島綿)に代表されるもともと長く採取された糸などが好んで使われています。製品にしたときに光沢感と滑らかさな肌触りを感じられます。
一方の短い糸が悪いわけではありません。綿の素朴な雰囲気が、製品になったときに感じられます。吸水性などの性能は採取された糸が長くとも短くとも変わりありません。でも糸になった時、製品になった時には雰囲気や見え方が違うのでそれぞれに適した用途がある、ということです。
ちなみに、綿は植物ですから採取される糸の長さには限界がありますが、ポリエステルのような合成繊維は、作る側の意図によってどこまでも長く作ることができます。1キロメートルにしたければそうすれば良いのです。しかし、結局糸を作るときには切って、撚りをかけて作られていきます。短く裁断されたものをステープル、長めに裁断されたものをフィラメントと言います。綿同様に長めに裁断した糸の方が、撚りをかけて出来上がった仕上がりが滑らかになります。
糸は撚りをかけながら長くつくられていきますが、数本引き揃えて作られるのが一般的です。2本取り、3本取りなどにすることによって糸に強さを与えることができます。
また、撚りをかける方向も種類があります。片方の回転をS撚りとすると、逆回転をZ撚りといいます。
Tシャツを洗濯すると、全体的に斜めに曲がってしまったことはありませんか?これはジャージーを編みたてるときに片側にテンションがかかってしまうことが原因ですが、糸の段階でS撚りとZ撚りを組み合わせてテンションを整えておくと洋服となったときの仕上がりに影響すると言われています。
とかく、ファッションは見た目で判断されていますが(それで良いのですが)、美しく見えるために原料の加工に工夫が施されています。それを思うと、ファッションはより一層深く楽しめるのではないでしょうか。注:個人的な見解です。