今年の都心の天候は、すこし例年とは違っていたように思います。10月は記録的な大雨と雨続きが長引き、雨の日数が記録的だったと記憶しています。11月は気温が下がり、秋を通り越して冬が早くに訪れました。そして年末年始も寒い。
この早めに来た寒さも影響したのか、今年の冬セールの開催に関して、昨年までとは大きな違いが見れらています。
伊勢丹・三越グループは約6年前から、セール時期を後ろ倒しにした日程で組むようになっていました。
例えば冬のセールであれば、他の百貨店、ショッピングセンター、駅ビルなどのファッションビルでは、12月から顧客向け(ハウスカード登録者やメルマガ会員)に向けて20~30%オフをスタートし、年明けには、館全体でのセールに入っていくのですが、伊勢丹・三越グループのセールスタートは2週間ほど後ろにずれており、1月の15日ごろとしていました。
アパレル業界にいて、企画から生産に至る物つくりから店頭での販売に関わっていると、その商品の実需期にその商品が正規の価格で売れて欲しいと思います。例えばコートは12月後半、1月、2月と気温の低い時期に活躍するのだから、セールではなくてプロパーで売れて欲しいのです。
秋口向けの薄手のものなどはもう、時期がずれているのである程度割引もやむを得ないかとも思うのですが、今が本番の商品が早くにセールにかけられるのは、作り手の立場に立つととても悲しいものです。
とはいえ、このような流れは、すっかりと日本のアパレル市場において、定着していました。そしてだんだんとセール時期を早めて、他の売り場よりも先にお得感をだして在庫処理・換金をするようになっていきました。そうすると次のセ-ル期になると、もっともっと他よりも早くと、各ディベロッパーがセールを早期に仕掛けてきます。
そんな中で、6年前に伊勢丹・三越は、セール時期を2週間ほど後ろに予定をずらしたのです。実需期の商品を早期にセールにかけない、そんな流れを定着できれば、日本のアパレル業界の収益改善につながっていくとしてアパレル販売をけん引する伊勢丹が始めたことでした。
セールでの販売ではなく、プロパー販売の時期を長くすることで、換金率を高めて収益を確実に取るためです。消費者からみれば、年明けにセールで服を探したいときに、今までの伊勢丹ではセールが遅いため、他の百貨店での購入に流れてたようです。
それが今年の冬のセールは、他のディベロパーと横並びでスタートさせるとの発表がありました。理由には、冬商材の早期換金と、消費者のニーズに合わせて、次の春物に早く切り替えていきたいから、とのことです。
確かにそうです。
しかし、やはり伊勢丹のセールスタートが他の館と横並びの開催になるのであれば、残念な気がします。せっかくの日本のアパレル市場にとっての大きな商習慣の改革だったので、とても期待していたのです。
このまま、見守っていきたいと思います。